リノベーションの成否をわける「インスペクション」とは
既存の中古住宅に手を加えることで建物の価値を上げ、かつ自分の好みを反映できるのがリノベーションです。しかし中古住宅は、構造上の問題や、補修が必要なことが多いのも事実です。インスペクションは建築のプロの目線で住宅の現状を把握し、補修が必要な部分と不要な部分を明確化することができます。リノベーション前にぜひ考えてほしい、インスペクションの仕組みや費用、注意点をまとめました。
インスペクションが注目を集める理由とは
インスペクションとは、住宅に精通しているプロが第三者的な立場から住宅の状況、劣化具合、修理が必要な箇所などをチェックし、どのような補修を優先的に行うべきか等をアドバイスしてくれるサービスです。
インスペクションは日本ではまだあまりなじみのない言葉ですが、中古物件の流通が多いアメリカでは、物件購入を左右する重要な指針として定着しています。アメリカでは建築年数100年を超える物件も珍しくなく、リノベーションを繰り返しながら住み続けるスタイルが一般的であるため、インスペクションの需要はとても高くなっています。
日本でも「中古住宅をリノベーションして住む」という住まいのあり方が注目を浴びるようになったことから、インスペクションへの関心も徐々に高まってきました。ホームインスペクターの仕事を請け負う民間団体が増加したことを受けて、2013年には国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を発表。日本におけるホームインスペクションの基準が明確化されました。
地震国でもある日本では、住宅における安全性は特に重視されます。インスペクションは第三者によるサービスですから、ホームインスペクターから補修工事を強制されることはありません。「中古住宅は耐久性や劣化が心配」という人が、安心して中古物件の購入やリノベーションを進めることができる仕組み。それがインスペクション・サービスなのです。
インスペクションの仕組みとは
- インスペクションの流れ
インスペクションの具体的な流れを見ていきましょう。まずはホームインスペクション・サービスを提供している業者へ電話やホームページにて問い合わせ、診断内容や費用を確認します。依頼する業者が決定したら、希望日時にて申し込みをしましょう。診断する建物の平面図や立体図などの必要書類があれば、事前もしくは当日に提出します。
診断当日はホームインスペクターが現地へ出向き、通常依頼者の立会いのもと進めていくことになります。その場で診断を聞くことができるため、疑問点は都度インスペクターに確認することができます。インスペクションにかかる時間は業者によって異なりますが、30坪程度の住宅なら2時間〜3時間程度です。後日インスペクションの報告書が業者より送られてきますので、新たに質問等があれば問い合わせ、最後に料金を支払って終了です。 - インスペクションでチェックする項目
外回り、室内、床下、屋根裏、設備の状態を調べていきます。外回りでは建物で最も大切な基礎を初め、外壁仕上げ、屋根、バルコニー等をチェックします。室内では壁、柱、床、天井、階段などを、床下では基礎や束を、そして天井裏や小屋裏の梁なども調べます。
確認する劣化現象としては、ひび割れや欠損、腐食、蟻害といった構造耐力上の安全性に影響するもの、雨漏りや水漏れの発生もしくは発生する可能性が高いもの、そして水道管のつまりや漏れなど設備に日常生活上生活に支障のある問題が発生しているものが挙げられます。
インスペクションにかかる費用と注意点
インスペクションの費用は、業者や調査方法によって異なります。目視によるインスペクションであれば5〜6万円前後が一般的ですが、機材を使用してより詳しく調べる場合は10万円以上の費用がかかるケースもあります。費用の詳細は各業者へ問い合わせましょう。
なおインスペクションを不動産会社やリフォーム会社などインスペクションと利害関係のある業者に依頼してしまうと、本来不要であるリフォームを進められる等公正な診断が下されない恐れがあります。インスペクション業者は独立した第三者の立場で行うからこそ意味があります。業者探しはリフォーム会社等に任せず、自分で確認して選ぶようにしましょう。
リノベーションをする前にインスペクションをしよう
中古物件をリノベーションする上で心配なのは、やはり建物の劣化具合や基礎的な欠陥です。せっかくリノベーションしたのに後から構造上の問題が見つかったのでは、時間もお金も余計にかかってしまいます。事前に住宅のプロにインスペクションをしてもらうことは、効率的なリノベーションへの近道になりますので、リノベーション前のインスペクションを検討してみてはいかがでしょうか。