副業で不動産投資!サラリーマンが法人設立するメリットとデメリット
アーリーリタイヤや老後資金の確保など、さまざまな理由で資産運用や副業を始めるサラリーマンが増えています。なかでも注目を集めているのが不動産投資です。その際に法人を設立する人が少なくありませんが、法人化にはどのような意味があるのかをご存知でしょうか。この記事では、サラリーマンが法人を設立して不動産投資を行うことのメリットとデメリットについて解説していくので、ぜひ参考にしてください。
就業規則は大丈夫?不動産投資で法人設立すると副業とみなされるのか
働き方改革などにより、多様な働き方が認められる時代になっています。そのため、サラリーマンでも副業を行う人が増えてきました。しかしながら、全ての会社で副業が認められているわけではないので注意が必要です。いくら副業が一般化してきたとはいえ、就業規則で禁止されている場合には副業を行うことはできません。そこで気になるのが、不動産投資は副業にあたるのか、という問題です。株などの資産運用を禁止している会社はほとんどなく、資産運用そのものは副業とみなされないことが一般的です。
資産運用を禁止するということは、国債の購入や外貨預金、場合によっては保険まで禁止ということになってしまいます。社会通念上、その就業規則のほうがおかしいと判断され、逆に企業のほうが信頼を失ってしまいます。そのため、サラリーマンが副業として資産運用を行っても問題はないといえます。しかし、「会社への業務提供に影響を与える」副業や、「本業に支障が出る」副業については、懲戒解雇処分が有効とされた判例が複数あります。つまり、長時間のデイトレードなどは、資産運用といっても副業と判断される恐れもあるのです。ただし、副業で懲戒解雇処分になるのは、あくまでも就業規則で副業が禁止されていた場合のみです。
不動産投資は、一度投資を始めてしまえばあまり手間がかかりません。そのため、純粋な資産運用と考えてよいでしょう。しかしながら、法人設立をした場合には問題が発生する可能性もあります。なぜなら、法人化することによって資産運用ではなく自営業とみなされる場合があるからです。副業禁止の会社では、何らかのペナルティを課される恐れがあります。そのため、法人を設立する場合は、あらかじめ就業規則をしっかりと確認しておくことが大切なのです。
法人を設立したからといって、不動産投資の内容が突然変わるわけではありません。そのため、法人化によって会社からペナルティを受けることに納得がいかないという人も少なくないでしょう。そういった場合は、合法的に法人設立を会社に隠しておくことも可能です。会社を設立した場合、謄本(法人登記簿謄本)に社長や役員の氏名が記載されることになります。そのため、自分が代表者として法人設立を行うと、当然ながら自分の氏名が記載され、会社などに知られる可能性が高くなってしまいます。
それを避けるためには、株主として会社を所有する形式にして、代表者は家族などの名義にするのが最も確実で安全な方法です。なにか「裏技」のようですが、法的にも全く問題はありません。ただし、報酬は配当として受け取る形になるので、税金面では不利になる可能性もあります。事前にしっかりと損益のシミュレーションをしておく必要があります。
不動産投資で法人化するメリットとデメリットを抑えよう!
不動産投資が軌道に乗ってきたからといって、必ずしも法人化が有利というわけではありません。法人化をすることには、メリットとデメリットの両方があります。その両方を把握して、法人化するかどうかを冷静に判断することが大切です。法人化することによって得られる最大のメリットは、「節税」です。一定の金額以上は、個人の所得税よりも法人の税率のほうが低くなります。不動産投資を行う人の多くが法人化を行うのは、このことが理由なのです。また、個人に比べて「経費」の計上がしやすくなるという点も見逃せません。これによってより節税がしやすくなります。
法人化することで得られるメリットは、ほかにも沢山あります。まず挙げたいのは、「損失を9年間繰り越しできる」ということです。不動産投資を行っていると、物件の修復などで大きな出費が発生することがあります。これによって赤字が発生してしまった場合、赤字分を9年間繰り越すことができるため、節税につなげることが可能になるのです。また、条件を満たした場合は「消費税還付」を受けることも可能です。「相続税対策」として活用することができるなど、個人に比べて多くの税制上のメリットを享受することができます。
税金で有利なだけでなく、「社会的信用」が上がるというメリットもあります。これによって資金調達がしやすくなるのです。銀行などの金融機関から資金を借りる場合、個人では限界があります。しかし、不動産投資は大きな元手が必要になるため、資金は多いに越したことはありません。法人として実績を積めば、個人では難しい億単位の資金も融資してもらえるようになるでしょう。ただし、大きな資金を融資してもらうためには黒字経営を続けることが基本となるので注意が必要です。法人は経費の計上がしやすいため、節税のために赤字にしてしまいがちです。しかし、赤字の法人では金融機関からの信頼を得ることができません。融資を受けて不動産投資の規模を拡大していきたい場合は、黒字決算を心がけることが大切です。
一方で、法人化には「法人設立の費用」というデメリットもあります。法人を設立するためには、必ず登記費用がかかります。例えば株式会社を設立する場合、30万円程度が目安となります。不動産の維持費用のほかに、あらかじめまとまった資金を準備しておく必要があります。また、税金の面でも注意が必要です。法人設立は税制面でのメリットがある反面、赤字の場合でも税金が発生するというデメリットがあります。利益が出ていない場合でも、「法人住民税」の均等割を支払う必要があるのです。
法人を運営していく以上、経理処理を行っていく必要があることも忘れてはいけません。複式簿記や決算処理は極めて煩雑であり、副業として行っていくには大きな負担となります。そのため税理士に処理を委託するケースが一般的ですが、顧問料が必要になります。不動産投資で法人化をする場合、こういった維持費用が発生することを覚悟しておく必要があるのです。
サラリーマンが不動産投資で法人化するベストなタイミングは?
不動産投資で法人化をする場合、法人化するタイミングが非常に重要になります。法人設立のタイミングを間違えると、法人化のデメリットばかりが目立ってしまうからです。逆に、タイミングさえ間違えなければ、法人化のメリットを最大限に享受することが可能になります。そのタイミングとは、不動産投資の利益が個人と法人の税率が逆転するポイントを上回ったときです。利益が低い場合は、法人の税率(法人税+法人住民税)よりも個人の税率(所得税+住民税)のほうが一般的に有利です。
しかし、あるポイントで個人の税率が一気に上がり、法人と逆転します。
それは「900万円超」というポイントです。例えば利益が900万円の場合、個人の税率は33%、法人の税率は約38%です。しかし、900万円を超えると、個人の税率は43%に跳ね上がります。そのため、このポイントを超えるかどうかが、法人化を考える際の基準となるのです。もちろん、サラリーマンの副業である以上、会社の給料も考慮する必要があります。その際は、所得の額面だけに囚われないようにすることも大切です。扶養者がいる場合の所得控除などもあるので、総合的に検討することが必要なのです。
また、購入する物件の規模も考慮する必要があります。大規模な物件の場合は、当初からそれなりの利益を期待することができます。その場合は、早い段階から法人化を検討しておいたほうが有利といえます。逆に小規模の物件から始める場合は、法人化のタイミングを慎重に見極めることが大切です。
【まとめ】計画的な法人化で不動産投資を成功させよう
サラリーマンが副業で不動産投資を行う場合、法人化することで多くのメリットが生まれます。しかしながら、法人化によってデメリットが発生することもあるので注意が必要です。大切なことは、いかにうまく法人化のタイミングをつかむか、ということです。適切なタイミングで法人化を行えば、節税などのメリットを存分に受け取ることが可能になります。計画的に法人設立の準備を進めていけば、決して難しいものではありません。ベストなタイミングで法人化を行い、不動産投資を成功させましょう。