不動産投資のリスク対策に重要な「分散」について
不動産投資は賃貸経営によって安定収入を得られる方法としてよく宣伝されるようになりました。大損する危険性があまり大きくはないと考えている人もいますが、投資リスクは存在しているので注意しなければなりません。どのようなリスクがあるのかを理解し、具体的な対策を考えてみましょう。不動産投資におけるリスク対策として重要なのは分散ですが、どのような対策を立てられるのでしょうか。
不動産投資にはリスクがある
不動産投資におけるリスクとして主要なものが三つあります。一つ目は「空室リスク」です。
不動産投資が利益を生み出せるのは入居者がいて家賃を収めてくれるからに他なりません。入居者が見つからない状況が続いてしまうとローンの支払いや固定資産税や都市計画税の納税、建物の維持などのために支出が生じ、経営は赤字になってしまいます。人気がなくなってきたときには適切な空室対策を行っていく必要があるのが不動産投資の特徴です。建物は経年劣化を起こしていくので徐々に価値は低下して人気も低下してしまいます。ただ、それ以外の要因でも空室が急激に増えてしまう可能性もあるので注意しなければなりません。
例えば、ビジネス街になっているから入居者が大勢集まると予想して投資物件を決めたものの、近くの都市で開発が行われたなどの理由でビジネス街が数年後には寂れてしまうというケースがあります。また、住宅街に投資物件を手に入れたときにもリスクがあります。周辺施設の充実や公共交通網の発達などによって住宅地としての開発が進み、新築マンションが次々に建てられることは珍しくありません。入居者の獲得競争で負けてしまうと経営が困難になり、不動産投資で損失を生むことになってしまう可能性があるでしょう。
二つ目は「価値の変動によるリスク」です。不動産投資では購入した物件を最終的には売却することになります。いかに収益を上げてきたとしても、売却損が大きくなってしまっては大損することもあるのです。建物の価値が低下してしまうのは仕方ないことです。しかし、土地の価値については経年による低下はなく、周辺環境の変化や物価の上下動による影響を大きく受けます。購入当時は繁栄していた都市でも、数十年後になると廃れてしまうことはあります。その影響で地価が下落し、不動産投資をやめる段階になって損をすることもあるのです。
三つ目は「災害により生み出されるリスク」です。不動産投資は運用できる建物や土地がなければなりません。もし地震が起きてマンションが倒壊してしまったら、復旧するまでは入居者を獲得することはできないでしょう。マンションを建て直さなければならないとなると莫大な費用がかかるため、諦めて土地を売らざるを得ないかもしれません。台風や突風などでマンションの一部が破損したという場合でも修理に費用も時間もかかり、住人に退去してもらわなければならないこともあります。
自然災害だけでなく、人災によるリスクもあります。例えば、悪意のある人に放火されてしまって建物が使えなくなってしまう可能性もあるでしょう。トラックが衝突してしまってマンションが大破してしまうかもしれません。また、自殺や病死などで曰く付き物件になってしまい、なかなか入居者を獲得できない状況に陥るリスクもあります。このような事態にも備えておかなければならないのが不動産投資なのです。
不動産投資のリスク対策で重要なのは「分散」
不動産投資のリスク対策で最も重要なのはリスクを分散することです。物件によってリスクの大きさに多少の差があるだけで、どのような投資物件を選んだとしてもリスクをゼロにすることはできません。不動産投資は何十年という単位の長期投資として行うことが多いのが特徴です。何十年も先の都市開発の事情や、自然災害の発生状況などを予測するのはまず不可能でしょう。リスクがあるのは受け入れた上で、不運な事態が起こったときにいかにリスクを小さくするかを考えるのが大切なのです。その手段として優れているのがリスク分散です。
投資の世界ではリスク分散がよく行われています。例えば、1000万円の投資資金があるときに、株式投資には300万円、不動産投資には500万円、FXには200万円といった形で、資金を分散させる方法が一般的です。リスク要因が異なる投資に少しずつ資金を使うことどれか一つが失敗しても大損せずに済むようになります。ただ、不動産投資をするときに他の投資にも手を出した方が良いというわけではありません。不動産投資という枠組みの中でも工夫をすればリスクを分散させることができます。様々な戦略を立てられるので、具体的な対策例を確認しておきましょう。
具体的にどのように対策をおこなうべきか
不動産投資におけるリスク分散の典型例として挙げられるのが部屋数をできるだけ多くする方法です。ワンルームマンション投資は一部屋からできるようになっていて、少額投資できる魅力があります。しかし、一部屋しか持っていないと空室になったら収入はゼロになります。10部屋のマンションに投資したとしたら、一部屋が空室になっても家賃収入は一割しか減りません。このように部屋数を増やすことで空室リスクは低減させることができます。しかし、必ずしも部屋数が多ければ多いほど良いというわけではありません。満室にできる範囲内で十分な数の部屋を確保することで利益を最大化できるという点も念頭に置いておきましょう。
部屋のタイプによるリスク分散もできます。単身者向けのワンルームだけのマンションを運用するのに比べて、間取りが異なるファミリー向けの部屋なども盛り込まれているマンションに投資した方が空室リスクは低下するでしょう。地域によってどのような間取りのニーズが高いかは異なりますが、そのニーズの傾向が数年後まで同じとは限りません。いくつかの間取りの部屋があるとニーズが変動しても入居者がゼロになることは少なく、最低限の家賃収入を維持できる可能性が高くなるのです。マンションだけでなく一戸建てや駐車場なども持つとさらに幅広いニーズの変動に応じることができます。
一方、地域によるリスク分散も重要な例です。同じ地域で複数の物件に投資するよりも、異なる地域にある物件を選んで投資した方がリスクは低減されます。投資物件がある地域で都市開発が進められて需要が変動しても、他の地域で経営しているマンションがあればその収入は変動することはありません。地震や津波などが発生したときにも、二つの地域で投資をしていれば一方の地域からの収入は維持することができます。ワンルームマンション投資でも、違う建物から一部屋ずつ選んで投資すれば、人気の変動や管理費の変更などのリスクを低減させられるでしょう。
地域によるリスク分散は価値の変動によって生じるリスクへの対策にもなります。一方で大きな地価の変動が起こったとしても、もう一方は無事で大損を免れられる可能性があるからです。特にワンルームマンション投資の場合にはマンションの管理状況によって建物の劣化の具合にもかなりの違いが生じます。建物の価値が十分にあるうちに売って儲けようと思っているときには、いくつかのマンションに分散投資した方がリスクを下げられるでしょう。
【まとめ】リスクを回避する戦略を立てよう
安定収入が得られる投資として宣伝されている不動産投資にもリスクは必ず付きまといます。複数の不動産を違う地域で手に入れて分散投資をすればリスクは大幅に低減されるでしょう。空室の発生や価値の変動、災害などによるリスクを確実に回避する方法はありません。できる限り異なる種類の不動産を手に入れてリスクを分散させましょう。